水素 - 多くの可能性を秘めた技術水素に関しては、エキスパートの知識が強く求められています
水素に関するすべての疑問が解決されるまでには、まだ長い道のりがあります。というのも、水素の製造、供給、使用は、企業にとってまだ課題があるからです。しかし、ひとつだけ確かなことがあります。それは、モバイル式ソリューションや産業用ソリューションにおける水素や代替エネルギー源には、大きな可能性があるということです。家庭、産業、輸送において、環境にやさしく、排出ガスを出さないような未来の可能性です。
しかし、水素はすぐに複雑な課題が見つかるテーマです。だからこそ、実証済みの製品と数十年にわたる業界のノウハウを持ちながら、革新的な解決策を提案するエキスパートを味方につけることが重要なのです。新規開発であれ、連続生産であれ、HYDAC はお客様のプロジェクトを成功に導くお手伝いをいたします。お客様のご要望をお知らせください。
電解と水素製造
水素は、カーボンニュートラルな未来に向けて、産業やインフラにおいて化石燃料に取って代わる最も有望な代替エネルギー源のひとつです。水素はさまざまなプロセスで製造できます。最も持続可能な方法は、再生可能エネルギーによる電気を使った水電解です。このプロセスでは、2 つの水分子(2H2O)が電気エネルギーを使って 2 つの水素分子(2H2)と 1 つの酸素分子(O2)に分解されます。
使用される技術(AEL、AEM、PEM、SOEC)にかかわらず、当社は継続的に拡大する製品範囲により、お客様の水素製造をサポートすることができます。当社はすでに、お客様の電解槽をより効率的、経済的かつ安全にするための幅広い製品を提供しています。
当社の製品範囲
熱流体管理
洗練された熱流体管理を実現する当社のバランスオブプラントソリューションにお任せください。当社の製品範囲は、流体流動(純水、KOH 水溶液)等のための空気冷却システム、凝縮乾燥用コンプレッサー冷却システム(ガスクーラー)から、ガスや流体からの粒子濾過まで多岐にわたります。エアロゾル分離、流体処理、ガス圧縮のことならお任せください。また、厳選されたバルブやセンサー(圧力、温度、導電率、レベルトランスミッター、レベルスイッチ)を含む、お客様の電解槽のバランスオブプラント用の幅広い製品も提供しています。
水素 / ガス乾燥
用途によっては高純度水素が必要となります。しかし、原料ガスである水素は、製造後に水や酸素などからの不純物で汚染されることがよくあります。DIN EN 17124 では、これらの不純物は 5 ppm 以下でなければならないと規定しています。当社の革新的な水素乾燥により、必要に応じて、規格で要求されるよりも高い水素品質を達成することができます。
セパレーターの最適化 / 相分離
水素製造には多くの課題があり、気液分離も同様です。従来のセパレータータンクは大型で、混合物を積極的に分離することはできません。HYDAC のソリューションにより、セパレータータンクは最小限に削減され、アクティブ脱気ユニットによりシステム全体の効率は最大化されます。設置スペースの最適化の可能性について、お客様のセパレーターを喜んで調査いたします!ぜひご連絡ください。
油圧スタッククランプ
ネジロッドですか、それとも油圧シリンダーですか?多くの電解槽メーカーは、スタックのクランプにネジロッドや皿ばねを使用しています。これらの方法とは対照的に、油圧式スタッククランプは、運転中にスタックに最適で均質な力配分を可能にします。これにより、バイポーラ板間の漏れを防ぎ、メンテナンス作業を簡素化し、耐用年数を延ばすことができます。当社はスタック運転中にスタックにアクティブにかけるプレテンションとスタック組立中のスタックの静的クランプでお客様をサポートします。
水素充填ステーション
代替エネルギー源として水素を使えば、排ガスのない運転が実現します。水素と酸素の反応では、燃料電池車の動力源となるエネルギーが生産されるほかは、純粋な水蒸気が発生するだけです。人と環境に無害です。
この技術は世界的に重要性を増しており、水素充填ステーションのインフラは絶え間なく拡大しています。稼働率、エネルギー効率、コストの面で、水素補給技術の絶え間ない開発が大きな役割を果たしています。HYDAC はすでに幅広い製品でお客様をサポートすることができますが、新たな開発やイノベーションも進行中です。ぜひお問い合わせください。
当社の製品範囲
微粒子汚染、水素品質、ガス清浄度
微粒子汚染であれ、有害ガスであれ、水素には高い清浄度基準が適用されます。微粒子汚染は、水素充填ステーション内と燃料電池車の両方でシステム故障につながる可能性があります。長年にわたる技術的清浄度のエキスパートとして、当社は充填ステーションをサンプリングし、微粒子汚染負荷を評価するための製品である PSA-H70 を開発しました。その結果、低圧から高圧(最大 1050 bar)まで、粒子分離と液体分離の両方に適した、充填ステーション用の完全なガス濾過製品範囲を提供できるようになりました。
有害ガスは燃料電池スタックの欠陥(触媒毒として知られる)につながる可能性があります。世界で唯一:HYDAC は現在、充填ステーションの貯蔵バンク内のガス組成を常時測定するガス品質センサーを開発しています。
水素冷却
コンプレッサーシステムの冷却には、お客様のご要望に合わせた効率的な冷却システムと熱交換器を提供します。当社は、水素充填ステーションで圧縮ガスを再冷却するためのカスタムソリューションを製造しています。ルーフ構造、V 字型、タンクへの直接組み込みなど、当社の専門知識を駆使して、充填ステーションの冷却を最適化します。
製品範囲の継続的な拡大により、SAE J2601 に準拠したタンクプロセス用の極低温予冷用製品をまもなく提供できるようになります。これで、水素冷却のための当社の包括的なパッケージが完成します。
センサー / 圧力トランスミッター
水素充填ステーションでの充填プロセスは圧力制御されています。つまり、信頼性が高く安全なセンサーが必要とされます。HYDAC は、低圧から高圧(16 ~ 1050 bar)まで、お客様の用途に適した水素センサーを幅広く取り揃えています。当社のセンサーは水素用途用に特別に開発されたもので、ニッケル含有量の高いステンレス鋼製の特殊な測定セルが水素脆化を防ぎます。
新たに加わった SIL 2 認証センサーは、ディスペンサー(「ポンプ」)などに使用できます。個別相談で、新しいソリューションの利点について詳しくご案内します。
コンプレッサーのドライブ技術(コンプレッサーシステム)
多くの水素コンプレッサーオペレーターが目標とするのは、フェイルセーフで、エネルギー効率に優れ、省資源の運転を実現することです。これを可能にするのが、HYDAC の革新的な油圧駆動装置です。従来型のシステムと可変速システムのどちらがお客様の用途に適しているか、どのシステムが最も節約できる可能性があるかを当社がチェックします。システムの稼働率を高めるため、当社では作動油の状態を継続的に監視するシステムを装備することができます。リモートアクセスに加え、HYDAC フルードケアセンターでもオイル分析を実施することができます。
モバイル式&産業用ソリューションにおける燃料電池システムと水素エンジン
未来の技術として、燃料電池はモバイル式および産業用ソリューションにおいて多くの可能性を秘めています。水素で走る列車は、もはや単に夢として語るものではありません。現実のものです。自家用輸送、大型輸送、建設機械、農業機械、船舶、非常用エネルギー供給におけるゼロエミッション車の開発も推進されています。燃料電池システムを機能的に安全かつエネルギー効率よく運用するためには、高度な技術が必要です。長年の業界経験と高度な技術革新に基づき、当社はすでに幅広い製品ポートフォリオを提供することができ、しかもこの製品ポートフォリオは拡大し続けています。
当社の製品範囲
センサーとバルブの技術
高圧タンクシステムに接続された燃料電池は、高い流速と温度変動で運転されます。HYDAC は、水素タンクの高圧領域と燃料電池の低圧領域における物質の流れを安全かつ正確に制御するために、幅広いバルブ技術を開発してきました。当社の高圧センサーは、10 年以上にわたって圧力を検出し、システムを安全に操作するのに役立っています。ご自身でご確認ください。
空気の品質と水素の品質
燃料電池は、製造中に燃料電池システムに入り込んだり、運転中に燃料電池スタックに入り込んだりする小さな粒子や有害なガスに対して重大な反応を示します。これらの要因から燃料電池を保護し、耐用年数を延ばすために、燃料電池システムにはさまざまなフィルターが必要です。このような汚染から空気と水素の側を守るため、当社の幅広いフィルター技術とセパレーター技術を自由にご利用いただけます。
温度管理
燃焼エンジンを使ったモバイル用途や産業用途とは異なり、燃料電池システムでは熱エネルギーの一部が排気ガスの流れとともに放散されることはありません。熱エネルギーの大部分は、冷却水に放散されます。その結果、燃料電池の用途で必要とされる冷却電力が高くなります。電気モーターやコンバーター、さらにはバッテリーシステムなど、多くの電気消費装置が追加されるため、冷却・熱管理システムの複雑さは増しています。革新的なソリューションで、HYDAC は複雑な冷却および熱管理システムの開発と統合をサポートします。
制御技術
燃料電池システムとタンクシステムを機能的に安全に運用するには、電流の流れ、材料の流れ、情報の流れを完全に理解する必要があります。HYDAC はこれを理解し、複雑なソフトウェアシステムを開発する能力があるため、カスタム制御アーキテクチャを提供することができます。電気システムの統合を容易にするため、当社独自の非常に強力なコントローラーと機能的に安全なソフトウェアアーキテクチャ、および長年にわたってテストされた HYDAC 機能モジュールも使用しています。
FAQ
電解槽とは何であり、どのような仕組みですか?
一般に、電解槽は、電気エネルギーの助けを借りて、物質または分子を分離、分解、変換(酸化還元反応)する装置です。水電解槽では、水分子(H2O)が水素分子(H2)と酸素分子(O2)に変換されます。
実際の反応は、電気化学電池内で約 1.4 V の電圧で行われます。実用上の理由から、これらの電池を多数(電気的に直列接続して)積み重ねてスタックにします。電気化学電池周辺の周辺機器はすべて、「バランスオブプラント」という用語に含まれます。
バランスオブプラントとは何ですか?
バランスオブプラント(BOP)とは、一般的にエネルギー技術に関連して使われる用語です。これは、発電ユニットや変圧ユニットそのものを除いて、エネルギー変換に必要なすべての補助コンポーネントや補助システムを指します。
電解槽の場合、エネルギー管理(変圧器、インバーター、電力制御装置など)、流体およびガス管理(水調整、流体相と気相の分離、ガス乾燥、ガス圧縮)、熱管理(パワーエレクトロニクスの冷却システム、スタックおよび凝縮の乾燥)が含まれます。
燃料電池とは何であり、どのような仕組みですか?
燃料電池は、陽極(水素側)と陰極(空気側)の 2 つの電極で構成されています。両電極は電解質で隔てられています。PEM 燃料電池では、これはプロトンのみを透過する半透膜です。
水素は陽極に供給されます。その後、触媒(通常はプラチナ)の助けを借りてプロトンと電子に分割されます。プロトンはその後、膜を通って陰極に移動します。電子は電気消費装置を介して陰極に流れ、電気エネルギーが供給されます。陰極では、プロトンと電極が周囲の空気中の酸素と結合して水を形成します。
「電気化学電池」とはどのような意味ですか?
「電気化学電池」という用語は、電解セル、アキュムレーター電池、バッテリー電池、ガルバーニ電池など、さまざまなタイプの電池の総称です。この種の電池は、アキュムレーター電池のように逆の使用も可能な場合があります。これらの電池は充電と放電が可能です。つまり、電気エネルギーを化学エネルギーに変換し、再び電気エネルギーとして放出することができます。さらに、電解セルの種類によっては燃料電池として作動させることもできます。ここでは、水素と酸素が水に変換される際に、電気エネルギーと熱が放出されます。
電解セルと燃料電池は、バイポーラ板、電極、そして技術に応じてガス拡散層(GDL)と膜で構成されます。「プロトン / アニオン交換膜」(PEM/AEM)が使用される場合、これらは電極に直接接続されることが多く、「膜交換アセンブリ」(MEA)と呼ばれます。
「膜交換アセンブリ(MEA)」とはどういう意味ですか?
膜交換アセンブリ(MEA)には、複数の解釈があります。触媒層がコーティングされた膜だけを意味する場合があります(片側で陰極反応、反対側で陽極反応)。しかし大抵の場合はガス拡散層が含まれます。ガス拡散層も導電性でなければならないからです。
技術に応じて、膜は異なるポリマーやセラミックからなり、それぞれがプロトン、アニオン(例えば水酸化物アニオン=OH)、酸素を選択的に輸送することができます。ガス拡散層は、生成されるガス(電解)、特に使用されるガス(燃料電池)を、可能な限り均質に反応部位(触媒層)から、または反応部位(触媒層)に向かって輸送する役割を果たします。これらのガスは、バイポーラ板のチャネルを介して電気化学電池から、あるいは同電池内に導かれます。
バイポーラ板は何でできていますか?
複数の電池またはスタック構成で設置されたバイポーラ板は、何よりも、ある電池の陽極と隣の電池の陰極を物理的かつ電気的に接続する役割を担っています。燃料電池のバイポーラ板は、反応ガスを反応ゾーンに導く役割も担っています。この目的のために、両側のプレートにフロープロファイル(流れ場)がフライス加工またはプレス加工され、その中を片側に水素が流れ、もう片側に空気が供給されます。
バイポーラ板は、水素を運ぶ陽極板(マイナス(-)極)と、反応空気を供給する陰極板(プラス(+)極)という、単独の燃料電池の 2 つの極から構成されています。この板は、水蒸気の除去、熱エネルギーと電気エネルギーの出力の調整も行います。この板は電解セルでは主に、電解槽の冷却、陽極側への反応ガスの供給、反応で発生する水素やガスの除去に使用されます。
「スタック」とは何ですか?
電解および燃料電池技術において、スタックとは、ハウジング / フレーム / クランプ要素を含め、直列に接続された電気化学電池のスタックのことです。直列接続は、P=U*I に従って、同じ消費電力で電源電圧を上げ、電流を下げることを可能にします。これとは別に、スタックでの直列接続はシステム全体の設計を簡素化します。
圧力タンクシステムとは何ですか?
気体水素は高圧で圧縮した後、タンクに貯蔵することができます。例えば輸送分野では、商用車に 350 bar、自動車に 700 bar の圧力レベルが確立されています。700 bar での密度は約 40 kg/m³(350 bar では 24 kg/m³)です。高圧アキュムレータは、少量の貯蔵に対して低コストのソリューションを提供するため、主に自動車や商用車などのモバイル用途で使用されています。
現在、市場には 4 種類の圧力容器があります:
- タイプ 1:圧力容器は金属(通常は鋼)壁のみで構成されています。公称圧力は 200 bar の範囲です。
- タイプ 2:金属壁の他に、樹脂含浸ガラス繊維またはカーボンファイバー製のジャケットを備えた圧力容器で、公称圧力は 1000 bar までになります。
- タイプ 3:金属(通常はアルミニウム)でできたライナーと、カーボンファイバーでできたジャケットがタンク全体を覆っています。公称圧力は、通常 350 または 700 bar です。
- タイプ 4:アキュムレーターのライナーはプラスチック製(通常、ポリアミドまたはポリエチレン)で、ジャケットはタイプ 3 の容器と同様、通常カーボンファイバー製です。公称圧力は、通常 350、500 または 700 bar です。
液体水素の利点と欠点は何ですか?
気体水素貯蔵と比べ、燃料としての液体水素はエネルギー密度(71 kg/m³)の点で有利です。タンク内の圧力も低く保つことができます。このことは、貯蔵タンクの重量や必要スペース、コスト(特に貯蔵量が多い場合)、安全性の面で、タンクシステムにプラスの効果をもたらします。
しかし、極低温水素(-253 °C)の製造コストは無視できません。また、水素は常に冷却していないと発熱します。これによりタンク内の圧力が上昇します。これは「ボイルオフ」ロスにつながる可能性があります。つまり、気体水素は環境中に排出されます。
水素エンジンにはどのような種類がありますか?
水素エンジンは、液体燃料(ディーゼルやガソリンなど)の代わりに気体の水素で動くガスエンジンです。純粋な水素を動力源とする純水素エンジンがあります。水素と他のガス(メタンや天然ガスなど)の混合燃料で動くバイフューエル水素エンジンもあります。
既存の燃焼エンジンを、比較的少ない技術的労力で改造することができるため、水素エンジンは、燃料電池に代わるものとして考えられています。しかし、研究によれば、燃料電池の普及が進めば、コスト面での優位性はかなり低下します。加えて、水素エンジンは効率が低く、メンテナンスの必要性が高く、100 % カーボンニュートラルではないというレッテルを貼られています。
燃料電池電気自動車(FCEV)の仕組みはどのようなものですか?
「燃料電池電気自動車」(FCEV)は、「バッテリー電気自動車」(BEV)と同様、電気モーターのみを動力源とします。
BEV とは異なり、必要な電気エネルギーは大きなドライブバッテリー(トラクションバッテリーと呼ばれる)によって供給されるわけではありません。その代わり、代替エネルギー源から得た化学エネルギーを電気エネルギーに変換します。燃料電池を利用することでこれが可能です。
現時点では、燃料電池は、燃焼エンジンのような急速かつ長時間の負荷変化に対応するようには設計されていません。このため、(小型の)ドライブバッテリーも設置されています。これは負荷が低いときに給電され、負荷が高いときに追加エネルギーを供給するものです。これにより、FCEV 走行中は燃料電池を比較的一定の負荷で作動させることができます。
燃料電池発電所の効率はどのようなものですか?
燃料電池発電所(FCPP)、熱電併給(CHP)、燃料電池熱電併給発電所(FC-CHPPP)は、その総合的な効率の高さで傑出しています。使用される燃料電池技術に応じて、現在のところ電気効率は 30 ~ 60 % 程度です。電気と熱は電気化学反応から直接生成されるため、それ以上の変換ステップを必要とせず、総合効率は 95 % を超えます。
燃料電池発電所は、これまで主に 10 kw から 3 MW の出力範囲で開発されてきました。しかし近年では、一戸建て住宅やセミデタッチハウス向けの、電気出力 0.3 ~ 1.5 kW、熱出力 0.6 ~ 2.0 kW のマイクロ・ナノ燃料電池熱電併給発電所の方面で、低出力レンジの開発が進んでいます。高出力レンジでは、すでに約 80 MW の発電所が実現されており、モジュール設計によって今後数年でさらに増加する予定です。
「Power-to-X」とはどのような意味ですか?
Power-to-X(PtX または P2X とも呼ばれる)とは、可変的な再生可能エネルギーによる余剰電力を、あらゆる技術を支援するために利用することを指します。例えば、これらの余剰エネルギーは、バッテリーに直接貯蔵したり(power-to-power)、熱に変換したり(power-to-heat)、化学エネルギー源の生産に利用したり(power-to-gas、power-to-liquid)することができます。
余剰電力が化学エネルギー源の生産に使われる場合、さらなる区別がなされることがよく見られます(例:power-to-hydrogen、power-to-syngas、power-to-ammonia、power-to-fuel)。
水素経済においてアンモニアが重要な役割を果たすのはなぜですか?
アンモニア(NH3)は窒素と水素の化合物で、通常の状態では気体の形で存在します。ユストゥス・リービッヒによる窒素肥料の開発(1840 年頃)以来、アンモニアは最も重要な基礎化学物質のひとつです。しかし、年間生産量の大幅な増加が可能になったのは、1913 年頃にルートヴィヒスハーフェンの BASF 社でハーバー・ボッシュ法が産業規模で使用されるようになってからでした。今日、アンモニアは最も多く生産される化学物質のひとつであり(2021 年には 1 億 4,650 万トン、その 80 % が肥料用)、他のすべての窒素化合物の生産の基礎となっています。
持続可能な水素経済が発展していることを考えれば、アンモニアの年間生産量のさらなる増加が予期できます。というのも、純粋な水素にくらべ、アンモニアはより輸送や貯蔵に適しているからです。
沸点が -33 °C とかなり高いため、水素(沸点 -252 °C)に比べ、アンモニアの液化ははるかに簡単で安価に済みます。水素に比べてアンモニアの体積エネルギー値が高い(2.8 kWh/l に対して 3.2 kWh/l)ことも、特にロジスティクスにとって非常に重要です。